YHR-862。ヤマハ製のホルン。
この楽器との出会いは中学3年生の夏。
その年の初夏から故山本昭一先生に大阪・心斎橋ヤマハでレッスンを受けていた。
先生からどうだい、と勧められたのがきっかけだった。
当時、ヤマハのホルンのラインナップは・・・
- インペリアル・モデル(お買い得モデル)のFシングル、B♭シングル
- プロモデル(中級クラス)のF・B♭ダブル
- カスタム(上級クラス)のF・B♭ダブル、セミダブル、ウィンナーホルン
だったと記憶している。
↑の楽器は当時の定価で70万円くらいじゃなかったっけ。
もちろん、中3の私にそんな大金があるわけがなく、親に相談したわけだが
この話をしたときにかなり渋い顔をしていたと思う。
で、「高校はお金のかかる私立じゃなくてぜったい公立に行くから」と説得(と言っていいのか?)して買ってもらったのだった。
さてさて。
ホルンなど金管楽器の材料といえば「真鍮(しんちゅう)=ブラス」と呼ばれる材質が一般的だ。
「真鍮(しんちゅう)」とは、銅と亜鉛を掛け合わせた合金のことで、その割合が変わると合金の色が変わってくる。
銅70%:亜鉛30%・・・イエローブラス(一番多い材質)
銅85%:亜鉛15%・・・ゴールドブラス
銅90%:亜鉛10%・・・レッドブラス
(参照:記事ライブラリー http://www.pipers.co.jp/kijilib/brass-02.html)
ところが↑のホルンは銀色をしている。
これは「洋白(ようはく)」といって、銅と亜鉛の他にニッケルが混ざった合金を使用している。別名「ニッケルシルバー」。フルートでよく使われている材質である。
(参照:Wikipedia http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%…)
↑の楽器はラッカーコーティングされていない「ノーラッカー」仕様だ。
それで、ベルの部分はさびが出てくるのだが、それは金属磨き剤を使って落としながら磨く。私がよく使う磨き剤は「Venol(ヴェノール)」というドイツ製。
金属磨きは楽器を削りながら磨いていくということなので、あまりにさびが目立つ時・演奏会など人前で発表する時などたまに使用している。
↑これはマウスピース。
「Y&I(ワイ・アンド・アイ)」というメーカー製。
Yは故山本先生のイニシャルから、Iは当時先生とマウスピース製造で組んでいらっしゃった方のイニシャルから。
シャンクの部分のMTは私のイニシャル。1はマウスピースの品番。
↑山本先生手書きの仕様書。
これもこのホルンを手に入れた頃、先生に作っていただいたものだ。使ってもう20年になる。
はじめは銀メッキがかかっていてきれいな銀色をしていたが、いつしかはがれおちて真鍮がむきだしの状態になっている。
Y&Iというブランドはすでになく、もう同じマウスピースは二度と手に入れることができない。
↑楽器ケースに入った状態のYHR-862
中3以来、→高校→大学・・と使い続けてきた。
北海道に渡ってきてからも、それまでのようにはいかなかったが休みの時や、エキストラでバンドに参加する時などにこのホルンを吹き続けてきた。
2003年夏、私は青年海外協力隊でパキスタンに渡った。
そのとき、この楽器をどうするかしばらく考えたが、吹奏楽・クラシックが市民に愛好されていないパキスタンでは活躍の場がないだろうと考え、ミクロネシアに渡る同期の音楽隊員さんに使っていただくことにし、彼女にこの楽器を託した。
2年後。
日本に任期を終えて帰国した彼女からこの楽器が返送されてきた。
彼女はミクロネシアの子どもたちにこの楽器を使って音楽を指導してくださり、キズやヘコミがない状態で私に返してくださった。
まいちゃん、どうもありがとう。大切に使ってくださって。
このYHR-862が私の手元に来てから20年が経った。
ロータリーバルブの部分の洗浄を数回、オーバーホールという全体調整を数回、メーカーに依頼して行った他は大きな修理などすることもなく使い続けることができた。
「愛着(あいちゃく)」を持って使い続けることのできた私の大切な相棒である。
現在のヤマハホルンのラインナップ(YHR-862はすでに廃番になっています)
http://www.yamaha.co.jp/product/wind/brass/hr/index.html
コメント
[…] 始めようと思い立ったのは、任地で使える小ネタがあればなぁと考えたからか。 中学から続けていたホルンは、パキスタンでは知られていないし、使える場所がないから、その代わりに […]