初稿:2005年4月11日 更新:2018年5月23日(題名変更、内容を1ページに集約、章立て、リンクチェック)
目次 | Table of Contents
会議の概要
パキスタン政府障害者支援政策(2002年策定)
National Policy for Persons with Disabilities
2002年11月にパキスタン政府が策定した障害者支援ポリシー
PDFデータ(世界銀行)
http://siteresources.worldbank.org/PAKISTANEXTN/Resources/pdf-Files-in-Events/Pak-Disabled-Policy.pdf
この政策の有用性、今後どう活かしていくかを話し合うため会議が開かれました。
会議名・主催者・日時・参加者
会議名:
National Consultation on National Plan of Action (NPA) to Implement National Policy for Persons with Disabilities
主催者(共催):
女性開発・社会福祉・特別教育省(2005年当時)
Ministry of Women Development, Social Welfare & Special Education
特別教育局(略称:DGSE)
Directorate General of Special Education
http://cadd.gov.pk/directorate-general-of-special-education-and-social-welfare/
世界銀行パキスタン事務所
http://www.worldbank.org/en/country/pakistan
日時・場所:
2005年4月4日(月)~5日(火) イスラマバード市内:Bestwestern Hotel
開会式・閉会式には
Zobaida Jalal(ズベダ=ジャラール)女性開発・社会福祉・特別教育相(当時)
John Wall世界銀行パキスタン事務所長(当時)
が出席しスピーチを行ったほか、
連邦政府(次官級)、パンジャーブ州・シンド州・バローチスタン州・北西辺境州・カシミール・ノーザンエリアなど各州障害者支援施策担当者が、
障害当事者側からは、
Milestone Society for the Special Persons(マイルストーン:ラホール)
http://www.milestone.pk/
http://ktc-johnny.com/milestone.html
Special Talent Exchange Program(STEP:イスラマバード)
http://www.step.org.pk/
Karakoram Area Development Organization(KADO:フンザ)
http://kado.org.pk/
http://ktc-johnny.com/gilgittrip5.html
障害者支援情報雑誌 Pakistan Special ファラハット・アッバス編集長
https://www.facebook.com/pakistanspecial/
http://ktc-johnny.com/pakspecialindex.html
などが参加。政府・世界銀行側の参加者の方々との活発な討論が行われました。
会議進行
討論は以下の6グループにわかれて行われました。
Group1 : Education & Training
Group2 : Early detection, prevention and managing disabilities from a health perspective
Group3 : Promoting Independent Living: vocational training, employment, rehabilitation, physical access and environment, support services
Group4 : Policy & Legal implications: What is needed? How to enforce?
Group5 : Developing partnership roles at all government levels, NGOs, Private sector, financing
Group6 : Advocacy, awareness and public sensitisation, sports and recreational activities
Group3では「IL(Independent Living = 自立生活)」が討議の柱として取り上げられるなど画期的な面が見られました。
このグループではマイルストーンのシャフィークさんが、IL(自立生活)の理念について参加者に繰り返し繰り返し説いていました。
2日間ともどのグループも活発な意見交換が行われていました。
2日目には各グループで話し合われたことについての報告がプロジェクター(パワーポイント)を活用して行われました。
世界銀行がしっかりサポートしていたことも会議が充実した理由かなぁと感じています。
CBR(Community Based Rehabilitation)との関連では、
・最前線のコミュニティレベルのリソースを拡大することの重要性
・政府が障害者に対し基本的支援手段(車いす・白杖・補聴器など)を提供できるよう財政的措置の必要性
・財政的な裏づけを得るために宗教省(ザカート=救貧税)との連携
・インクルーシブ教育(障害児と健常児がともに同じ学校・教室で学ぶ)の推進のために教育省と特別教育省との連携の重要性
などの意見がありました。
それを受けるかのように閉会式で、ズベイダ・ジャラール特別教育相は
「政府として基本的なファシリティを障害者に提供する用意がある」と強調していました。
また、会議を合間合間には全国から集まっているNGOの代表者たちが自己紹介や情報交換を活発に繰り広げており、そうした意味でも非常に有意義な2日間であったと感じます。
会議の模様(写真)
↑左端はDGSE(特別教育局)の局長さん、左から3人目がJohn Wall世界銀行パキスタン事務所長、政府側の次官(右から2人目)もいらっしゃいます。
↑イスラマバード市内の障害児支援学校に通う子どもたちが歓迎の歌と踊りを参加者の方に披露しているところです。
↑参加者は6グループに分かれてそれぞれのグループに与えられたテーマで討論を行いました。ファシリテータが会議をリードしながら進める形式です。
どのグループにも障害当事者の方々が参加されていて活発に発言されていたのが印象に残っています。会議は世界銀行のアドバイザーさんたちが参加していることもあり英語で行われましたが、熱くなるとウルドゥ語やパンジャービー語なども飛び出していました。
↑第3グループでは「自立生活(independent living)」についてマイルストーン(ラホールの障害当事者NGO))のシャフィークさんが繰り返し話していました。グループの討議の柱として”Independent Living”が扱われたことは画期的だと思いますが、他の参加者の方は初めてそのことばを聞く方も多く「自立生活とはどういうことですか?」などの様々な質問が飛び交っていました。
このグループの討議では、障害者の方々が社会にアクセスできるようにするためのfacilityの整備について話されていましたが、ある政府関係者の方が「すべての障害者の方々に必要なfacility(車いすや白杖、補装具など)を政府が提供することを定めた法律がすでに存在している」と話されたことには「え?そんな法律があるの?」と参加した方々がびっくりする一幕もありました。
その裏づけがあるからでしょうか、最近になり、マイルストーンが運営する自立生活センターに対しパキスタン政府から25人分の介助費用の補助が支給されるようになったということです。
↑2日目の後半は参加者が集合し、それぞれのグループで話し合われたことを報告しあっていました。
パワーポイントやプロジェクターを駆使し(聴覚障害者の方にも)わかりやすく伝える工夫がなされていました。発表しているのはSTEP(イスラマバードの障害当事者NGO)のアティフさんです。
↑全体ミーティングの中でも多くの参加者が自分の意見や質問を述べていらっしゃいました。彼女はパキスタンの視覚障害者NGOの代表を務める有名な方ですが、「障害者が社会にアクセスしやすい環境整備をぜひ政府は本腰を入れて取り組んで欲しい」と訴えていらっしゃいました。
↑今回の会議での収穫は、障害者支援に真剣に取り組む、または取り組んで行きたいと切望する方々との出会いでした。
Dawood(ダウッド)さん(中)はラーワルピンディに住む銀行マンですが、今回初めてこうした障害者支援関係の会議に参加されたそうです。そこで多くの方々と出会いさまざまな啓発を受けておられたようでした。
彼自身もポリオによる下肢障害のある方ですが「自分のことよりも私たち(夫婦)は他の障害者の方の役に立ちたいんです。」と熱く語っていらっしゃいました。
↑左の女性はノーザンエリアのある街にある視覚障害者支援学校で活動するアメリカ人女性です。
彼女はアフリカでも長年ボランティア活動を続けてこられ、そしてパキスタンに来られました。反米感情の著しく強いこのパキスタンで単身現地の方々とひたむきに活動を続けておられるその姿勢に私はただただ脱帽するのみです。
彼女は会議の翌日、バスで10数時間かけてノーザンエリアへ帰っていきました。
↑左はKADO(Karakoram Area Development Organization:フンザ地域のNGO)のプロジェクトリーダーを務める方です。KADOもフンザ地域で障害者支援活動を積極的に推進しており、スイス・カナダ政府などから支援を受けています。
今回の会議ではSTEP・マイルストーンの方たちとも活発な意見交換を行い情報の共有を図っておられました。
↑マイルストーンのメンバーと談笑している方(左から2人目)はカラチからお出でになったNPOの代表の方です。彼はアメリカに本部がある”LUTFI FOUNDATION”というNPOのパキスタン支部を運営していて、手作りカードの製作を手がけています。
↑彼(カラチ)の奥さんが毎日100種~200種のデザインアイデアを生み出しながら精選して素敵なカードデザインを手がけていらっしゃいます。それを障害者の方が丁寧な仕事で製品化しているんです。
たくさんのサンプルを持ってこられていましたが、その完成度の高さにみんなでびっくりしていました。
さっそくマイルストーンのシャフィークさんが1000枚ほどのカードをラホールで代理販売することを申し出るなど非常に注目を集めていました。
また、マイルストーンでの活動のひとつにこのカードの生産も視野に入れていらっしゃるようでした。
↑閉会式で演説するZobaida Jalal大臣。今回の会議に参加された方に謝意を述べ、政府としても一層努力していきたいと語っていらっしゃいました。
↑閉会式後、STEPやマイルストーンのメンバーは大臣といろいろお話していました。財政難などさまざまな問題を政府が抱えていることも事実ですが、こうした対話の積み重ねは間違いなくパキスタンの支援を必要とする全ての方々のためになることと思います。