帰国報告会レジュメ(協力隊活動終了時:2005年7月)

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初稿:2005年7月8日 更新:2018年5月31日(活動報告書についての情報追加)

はじめに・活動報告書

本項では、JICAパキスタン事務所で開かれた帰国報告会時(2005年07月上旬)に使用したレジュメを手直ししたものをご紹介しています。

協力隊員は、
訓練中: 1回(活動はまだなので、要請の内容と抱負などを書く。ゼロ号と呼ばれている)
派遣中: 5回(1号~5号)
の報告書の提出が義務付けられています。

報告書には、計画した活動について成功、失敗の分析、活動上の悩み、人によれば協力隊事業の在り方(批判含め)の提言まで、ストレートに綴られています。

ブログやSNSで発信していない方たちの活動の様子が分かる
ブログやSNSの内容から受ける印象とは違った、よりリアルな活動の様子がつかめる
応募したい職種、行きたい国の実際の生活を年代・地域を総攬する広い母数から検索しイメージを掴むことができる

など、活用できる利点は多いと思います。

派遣中提出する活動報告書について、公開されています。

よくある質問 | JICAボランティア(2018年5月閲覧)
https://www.jica.go.jp/volunteer/outline/qa/

2018年5月現在、東京・JICA市ヶ谷ビル内のJICA図書館で、専用端末での閲覧(無料)、コピー(A4・10円)の利用のみとなっています(以前は複写郵送サービスがあったが現在はなし)。

JICA図書館へのアクセスが難しい場合、活動報告書を公開されている隊員、OVの方がいますのでご参考になさってみてください。
Google検索結果 | 青年海外協力隊 活動報告書
https://www.google.co.jp/search?q=%E9%9D%92%E5%B9%B4%E6%B5%B7%E5%A4%96%E5%8D%94%E5%8A%9B%E9%9A%8A+%E6%B4%BB%E5%8B%95%E5%A0%B1%E5%91%8A%E6%9B%B8

帰国報告(パキスタン・養護:2005年7月)

平成15年度1次隊(パキスタン派遣:養護) M.T(私の名前)
活動先: 国立障害者職業訓練センター(イスラマバード)
National Training Center for Special Persons 略称:NTCSP

イスラマバード圏障害児支援機関MAP

イスラマバード圏障害児支援機関MAP(2005年現在)

活動先について

旧校舎

旧校舎(~2005年6月まで)

新校舎

新校舎(2005年7月~)

1986年の設立、2005年独自の新校舎が竣工、移転した。

活動先への協力隊の配置
平成7年度1次隊: Tさん(家政)、Nさん(竹工芸)
平成10年度1次隊: Oさん(竹工芸)
平成14年度3次隊: Kさん(木工)
平成15年度1次隊: MT(わたし:養護)
平成16年度3次隊: Mさん(比較工芸)

要請内容・活動上の問題と克服

要請理由

技術講師にたいして、障害を持つ生徒への指導の仕方、カリキュラムへの助言、父兄への指導を行うことで
より効果的な訓練が可能であると考えられ、隊員要請となった。

障害のある子どもたちへの関わり方

繰り返しの指導を続ける「忍耐」と失敗を繰り返す子どもへの「寛容」
→ 人を育てる上での鉄則
→ この国の人たちにとっても難しい課題だった >> 「忍耐」と「寛容」
(自分とは血のつながりのない人たちに(ビラーダリー外の人たちに))

期待される業務内容について

1 技術講師および、センタースタッフに対し、生徒の指導の仕方およびカリキュラムへの助言を行う。
→ カリキュラムがない・先生が恣意的に行っている。
2 父兄への相談指導、カウンセリング、助言およびPTAとの連携
→ PTAとの信頼関係が崩壊(会費の使い込み→作業のための補助金が出ない)
3 同僚講師とともに、年中行事の企画を行う。
→ これはできそう。
4 教材・教具の整備、アイディア、発想の支援
→ これもできそう。
5 職業訓練後の社会復帰への助言も期待されている。
→ むちゃくちゃ難しい。学校は公務員の障害者枠などごく限られた就職のあっせんをするのみ。

上記事情から、私のミッションは以下にしぼられた

1) 知的障害のある子どもたちのクラス(Art&Craft)で担任をすること。
2) 学校の諸活動を写真に記録し、そのプリントやCDを学校に提供すること。
3) レクリエーション・スポーツ活動でのマンパワーとしてのお手伝い。

1) 知的障害のある子どもたちのクラス(Art&Craft)で担任をすること。
生徒たち

生徒たち

生徒たち

生徒たち 

生徒です

生徒です

在籍生徒数
2003年10月 5名
2004年6月 14名
2005年6月 17名

担任
私、S先生(女性45歳)、Sさん(雑用)
学校としては・・・・技術の習得が難しいこうした子どもたちの扱いに苦慮している。(デイケアセンターを志向していないが、実態はデイケアセンター化)
私としては・・・・日本で経験して感じてきた通りのスタイルで(一日一日を楽しかったと子どもが思えるようなかかわりを、愛情を持って!)

【環境整備】

教室

教室

在籍表

在籍表

ウルドゥアルファベット表

ウルドゥアルファベット表

歌の歌詞表

歌の歌詞表

ちぎりえの作品

ちぎりえの作品

↑は、生徒の手作りによる(ちぎり絵の手法で) 時間がかかりましたがよいものができたと思います。
また、生徒の活動が見えてくるような掲示物(作品・作業の様子を記録した写真)を多く貼るように気をつけていました。
カリキュラム(シラバス)を使っていない実態・・・テキストよりもこうした掲示物のほうがこちらのスタッフにとっては有用だろうと考えました。

6月~7月にかけて → 新校舎に移転後、現地スタッフたちだけできれいにデコレーションをしていました。

新校舎の教室

新校舎の教室

新クラスの掲示物

新クラスの掲示物

掲示物

掲示物

展示品

展示品

【作業種を増やす】

ちぎりえ・折り紙・園芸・室内レクリエーション(体操・風船バレー)・造花づくり・アイスクリームのふたを使った筆入れづくり

【特に注力した作業:フレームを使った毛糸編み】

メリット
・モノをつくったという達成感を味わいやすい。
・現地スタッフがこれまでも取り組んでおり、今後も継続して行える作業種である。
・担当するすべての子どもに教育の機会を保障する。

毛糸を使ったマットの製作工程表(ウルドゥ語:GIFファイル)
ページ1(169KB)  |  ページ2(171KB)  |  ページ3(152KB)
クレープペーパーを使った造花の製作工程表(ウルドゥ語:GIFファイル)
ページ1(111KB)  |  ページ2(123KB)

フレーム

フレーム

作業

作業

作業

作業

毎日10~15人の生徒に順番に作業を繰り返し繰り返し教えていきました。
必要な材料は(学校から予算がもらえなかったので)現地生活費から出してでも買い揃えて用意しました
→ クラス活動の活発化

生徒作品

生徒作品

生徒作業中

生徒作業中

パッキングした作品

パッキングした作品

↑きれいにパッキングして展示することも心がけました。

大型フレームでの共同作業

大型フレームでの共同作業

↑2005年5月の作業の様子です。

2) 学校の諸活動を写真に記録し、そのプリントやCDを学校に提供すること
3) レクリエーション・スポーツ活動でのマンパワーとしてのお手伝い

いろいろな会合に参加させていただけるチャンスがひろがった。 → 新たな人脈の開拓

【パキスタンの障害当事者の方たちとの出会いと結びつき】

休暇を利用してパキスタン各地の障害当事者NGO、学校の見学を行ってきた。マイルストーンの方たちと

なかでも、ラホールの障害当事者団体「マイルストーン」の方とはいいお付き合いをずっと続けてきた。
彼らを通じて、パキスタン・日本・タイの障害当事者の方との出会いがひろがった。

STEPの方たち

ファラハットさんと
パキスタン・スペシャルの編集長さん

という2年間を過ごしてきました。
学校の先生(公務員)のやる気の低さに怒ることもしばしばでした。
が、こういう学校外での出会いをさせてもらえたことでいい刺激を見つけることが出来、フラストレーションはだいぶ抑えることができたのではないかと思います。

2年間の活動を振り返って

校長先生・調整員さんと

校長先生・調整員さんと

障害児教育でもっとも大切なことは子どもたちの変化を見逃さない繊細な感性と、失敗を繰り返す子どもたちを温かく見守る寛容性だと思います。
その意味では教師のトレーニングがとても重要になってきますが、その部分での先生方の変化はほとんど見られませんでした。
しかしながら、それであきらめず、地道に与えられたクラス担任の仕事をこなし、写真撮影など本来の要請内容にはいってはいないけれど必要とされる仕事に取り組むことができたことは、何らかのお役に立ててよかったなぁと思っています。

離任のあいさつを八木調整員さんとご一緒に校長先生・副校長先生のところで行ったときも、校長先生は「Great Man」だと誉めてくださいました。
この2年を振り返ると、調子を崩して学校を休むこともたびたびあったし、あまりに働かない先生たちにどやしつけたりしたこともあったのですが、そんなことにも関わらず「彼はGreatだ」と評価してくださるのは、実に協力隊員冥利につきることだなぁとうれしい気持ちでした。

途中では形や行く末の見えない活動でもこうして終わりの時に温かい言葉をかけていただけると、何がしかのお役に立てたのだとすべてが無駄ではなかったんだと思えるようになるのは不思議な感覚でした。