イスラームの教えとは? | イスラームの暦 | マスジッド(寺院) | ラマザーン(断食月) | 小イード | ハッジ(巡礼) | 大イード | イスラミックな名前
初稿:2005年6月28日
最終更新:2018年5月28日(「第三世界の姓名」・パキスタンの項の抜粋紹介)
目次 | Table of Contents
はじめに(2018年5月18日)
本項は、パキスタンでのムスリムネームについて、パキスタンで見聞したことがらとネット・文献資料をもとに書かせていただいております。
聞きかじりの乏しい内容です。参考となること、記述の間違いがありましたらお教えいただければ幸いです。
ムスリムネーム検索・主な名前・部族名など一覧
ムスリム・ムスリマ名辞典(日本語)
ムスリム・ムスリマ名辞典
http://islamjp.com/name/ziten.cgi
ムスリム(男性)、ムスリマ(女性)のムスリムネームについて、みんなで投稿しデータベース化しているサイトです。とても詳しく、参考になります。
171個のムスリムネーム紹介:Muslimname.com(英語)
Muslimname.com
http://muslimname.com/
171個のムスリムネームについて、読み(英語・アラビア語)・その名前の意味を英語で紹介しています。
パキスタンの大手ポータルサイトでの名前検索 | Hamari Web(イスラーム・ヒンドゥ・クリスチャン含)
Hamari Web | Name
http://hamariweb.com/names/
Hamari Web ハマリ・ウェブ(私たちのweb)はパキスタンのポータル(総合情報)サイトです。
そのコンテンツのひとつが、ムスリム・ヒンドゥ(パキスタンにもシンド州を中心に相当数のヒンドゥー教徒の人たちが住んでいます)・クリスチャンネーム紹介です。
たとえば、女性の名前では一番多いと思われるアーイシャ(Aisha, Ayesha)で調べると、
Hamari Web | Name | Ayesha
http://hamariweb.com/names/muslim/arabic/girl/ayesha-meaning_5830
と出てきました。英語、ウルドゥ語で意味が書かれ、ウルドゥ発音も聴けます。
SNS的にLIKEボタンや書き込みもできるようになっています。
パキスタンの一般的な男女の名前一覧(ウィキペディア:英語)
Wikipedia(EN) | Pakistani Name
https://en.wikipedia.org/wiki/Pakistani_name
後の「ムスリムネームの付け方」でご紹介しているウィキペディアのページです。
中段に、パキスタンでの一般的な男女の名前(given name)についての一覧があります。
そのほぼ全部にリンクが張られ、英語でその名前の意味などが説明されています。
ムスリムネームの付け方(パキスタン)
参考:アラブ人名の由来と正しい呼び方(ジェトロ・リヤド事務所編)
参考となる日本語資料として、ジェトロ・リヤド事務所編集の「アラブ人名の由来と正しい呼び方」があります。
日本貿易振興機構(ジェトロ)| アラブ人名の由来と正しい呼び方(PDF)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/middle_east/sa/others/pdf/name.pdf
13ページからなる詳しい資料です。本項に関係のある内容をご紹介すると、
アラブ人の男性の名前は通常単一の語から成るか、2語あるいは3語が繋がってできた名前のいずれかです。女性名の場合は、ごく少ない例外を除いてほぼ単一の語から成っています。(2ページ)
アラブ世界の人々の名前には元来は「姓」というものがなく、本人名の後に父名、祖父名を列記するのが基本です。これは男女ともに共通しています。(2ページ)
ムスリム(モスレム、回教徒)のアラブ男性の名前には預言者ムハンマド(俗にいうマホメット)の名前そのもの(Muhammad)とか、預言者の子孫や係累の名前(Ali、Hussain)、アッラーの神や善を称える言葉(Ahmad、Hamad、Sultan)等々、もともと信仰や宗教と直接結びついたものが多いのですが、とくに3語から成る名前(Abdulkareem、Abdulrazzak、Abdulrahman など)がそうです。
但しムスリム女性の名前については、”Fatimah”(預言者ムハンマドの娘の名)”Khadijah”(預言者ムハンマドの最初の妻)などごく少数の例外を除き、宗教に結びつく名前はあまり多くありません。 (5ページ)エジプト、シリア、パレスチナのように何世紀にもわたってムスリムがキリスト教徒と、ユダヤ教徒など数多くの異教徒達と混じり合って住んできた社会にあっては、自分が敬虔なイスラームの徒であることを自ら明示するために、本来の自分のファースト・ネームの頭に預言者ムハンマドの名をくっつけてひとつの名とする呼び方が時に行われます。これは『複合名』と呼ばれます。 (6ページ)
日本貿易振興機構(ジェトロ)| アラブ人名の由来と正しい呼び方(PDF)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/middle_east/sa/others/pdf/name.pdf
参考:パキスタン人の名前(ウィキペディア英語版)
また、ウィキペディア(英語版)に「パキスタン人の名前(Pakistani Name)」と題した項目があります。
Wikipedia(EN) | Pakistani Name
https://en.wikipedia.org/wiki/Pakistani_name
この項には次のように記されています。
Given names
Since the Muslim conquest of the Indus Valley, the majority of Pakistani given names are derived from Persian, Arabic and Turkish names. Children may be given one, two or rarely three names at birth. If the person has more than one given name, one of them is chosen as the person’s most called name, by which he is called or referred to informally. Generally for males, Muhammad, the name of the prophet of Islam, is chosen to be the person’s first given name, if he has more than one. Because of the prevalence of this practice, this name is usually not the person’s most called name, as it does not serve as a unique identifier. Females are usually given at most two names.(管理人試訳)名前(ここでは姓名の「名」)
イスラーム勢力のインダス川流域征服(註:早くはウマイヤ朝、続いてガズナ朝や、デリー=スルタン朝、ムガール帝国)以来、パキスタン人の大半の名前はペルシャ・アラビア・トルコ人名に由来している。子どもは生誕時に1語ないし2語(まれに3語)の名前が名付けられる。2語以上の名前を持つ場合、そのうちのひとつが普段の呼び名となる。
一般的に、2語以上の名前を持つ場合、イスラームの預言者であるムハンマド Muhammad の名を最初に置いている。(ただし)そのムハンマドはその人固有を指すものではないから、普段の呼び名とはならない。
女性は通常2つの名前が名付けられる。
Surname
Unlike the practice in Western countries, and other countries with predominant European influence, there is no one way of writing a full name in Pakistan. The most popular convention is to append the most called given name of the father to the person’s given names. Often, if the person has more than one given name, his full name consists only of his given names. Another convention is to prefix the person’s given name with a title, which is usually associated with his tribal ancestry. Due to western influence, appending rather than prefixing titles to given names is becoming more common. One notable exception is the title Khan, common in people of Pashtun origin, which has always been appended rather than prefixed to given names. There are several titles used in Pakistan and other Muslim countries. Syed, Shaikh, Khawaja, Pasha, Mirza etc. are common. Less commonly, the tribal name itself is appended to the person’s given names. For females, tribal names or titles rarely figure in the person’s full name (although this is becoming more common due to Western influence). Instead her full name would be composed of her given names only, or if given only one name, her given name appended with her father’s most called name. After marriage, the full name would be her most called name appended with her husband’s most called name. In official documents, a person’s identity is established by listing both the person’s full name (however they may write it), and their father’s. For married women, the husband’s name might be used instead of the father’s. Official forms always contain fields for both names, and they are used together as A son/daughter/wife of B on ID cards, passports, diplomas, in court, etc. The problem with these naming conventions is that it is difficult to trace back family roots. Many Muslims have settled in Western world and this naming convention creates some problems as a father will have a different surname or family name from his children.(管理人試訳)姓・名字(←厳密には名称・部族名・父親祖父の名前)
西洋・ヨーロッパ諸国と異なり、パキスタンにはフルネームの書き方が定まっていない。最も普及している書き方のしきたりは、父親の名前(father’s given name)を子どもの名前に付けくわえることだ。複数の名前(given names)を持つ場合、その名前だけでフルネームを構成することがよくある。
別のしきたりは、その人の部族名にちなんだ名称(title)を名前の頭に付ける(接頭辞:prefix)ことだ(例:Haji-、Mir-)。
(ただし)西洋の影響で、接頭辞よりも、特定の名称(title)を名前の後に付け加えることが一般的になってきている。特筆されるのは Khan カーン。パシュトゥン系の人の名前には必ず(Khanが)接頭辞ではなく、名前の後ろに付け加えられている。パキスタンやいくつかのイスラーム国家では、Syed サイヤッド、Shaikh シェイク、Khawaja カワジャ、Pasha パシャ、Mirza ミルザといった名称(titles)が一般的だ。また、あまり一般的ではないが、部族名そのものを名前(given name)に付け加えることがある。
女性の場合、部族名や名称が名前に付けくわえられることはほとんどない(が、西洋の影響で次第に取り入れられるようになってきている)。女性は(男性のような名称込みの)フルネームの代わりに名前(given names)のみで呼ばれるが、もし名前が1つだけの時はその女性の父親の最もよく呼ばれている名前(father’s given name)が付け加えられる。結婚した女性のフルネームは、最もよく呼ばれる名前(given name)に夫のよく呼ばれる名前(husband’s given name)が付け加えられたものになる。
公文書において、本人のフルネーム+父親のフルネームの列記で本人が認証されるが、結婚したあとの女性については父親の代わりに夫のフルネームを記すことになる。
そうした両名列記は公式フォームの記載事項に含まれ、IDカード、パスポート、卒業証書、裁判所での審理などではそれに併せて「~の息子」「~の娘」「~の妻」と記載・呼称される。
こうした名前の付け方のしきたりについて問題なのは、(西洋のそれと異なり)家族のルーツをさかのぼることが難しい点にある。
西洋に多くのムスリムが住むようになると、(西洋と従来との名前の付け方の違いから)父親が子どもとは異なる名前(surname and family name)を持つ場合があるということである。Wikipedia(EN) | Pakistani Name
https://en.wikipedia.org/wiki/Pakistani_name
参考:第三世界の姓名(1994年:明石書店)
ご紹介:第三世界の姓名-人の名前と文化-(1994年:明石書店)
http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Books/Extpub/c001.html
アジア経済研究所の研究者が執筆。各国の名前の付け方について、トリビア的に紹介されたユニークな本です。アジア~中東の項目が充実しています。
お近くの図書館にないときは、一括検索ができるカーリルが便利です。
図書館検索:カーリル
https://calil.jp/book/4750305790
この本のパキスタンの項から、(執筆:深町宏樹さん:元アジア経済研究所)
本項に該当する部分をいくつかご紹介します。
個人名
パキスタンでもイスラム教徒の命名のほとんどは「アッラーの九九の形容辞」や、その他の宗教的言葉(特にコーランに出てくる表現)を用いてつけられる。(P192)パキスタン人の「姓」
現代のわが国でいう「姓」(苗字)は、パキスタン社会では明確な形では用いられていない。それは、基本的には現在のパキスタン社会がいわゆる「姓」を不可欠としていないからである。(P194)
だが、社会層の高いものも父の名を用いることがあるし、現在の居住地ないし自らの部族・氏族の発祥地の名を「姓」として用いることがある。また、上層のものの社会的称号の中には「姓」の機能を果たすことのあるものも少なくない。(P194)
パキスタン人がよくいう「カースト」(ウルドゥ語では ذات zaat ザート)は、ヒンドゥー教徒のいわゆる「カースト」とは少々異なり、部族・氏族と考えた方が分かりやすい。このカーストはパキスタンでは姓として使用されることが多い。(P194~195)
上述のように比較的上層社会に属する人々は「姓」に相当する名を用いることが多いが、人により、あるいは時と場合により、姓を用いないことも少なくないため、不統一な姓名表記はさらに見分けにくくなる。(P195)男性の姓名の具体例
パキスタン人には姓はなくとも、個人名を二つ三つ持つ人は多い。たとえば、ムハンマド・ユーヌス(Muhammad Yonus)はその一例である。もっとも、このムハンマドはイスラム教の始祖である預言者の名であって恐れ多いため、Mとだけ略記されることが多く、「ムハンマド」が呼称になることはない。また、たとえばアブドゥル・ハミード(Abdul Hameed)のハミードは単独で用い得るが、アブドゥルを単独に用いることは厳密にいえばできない。(P195)ハーン(カーン)について
「ハーン」は、元来は蒙古などの遊牧民族の首長の称号であったといわれるが、南西アジア諸国では部族長などの尊称として用いられてきた。普通にハーンはアフガニスタンとパキスタンにまたがって住むパフトゥーン(=パシュトゥーン=パターン)民族の用いる称号と考えられているが、パキスタンなどの他の民族も用いる。(P196)女性の姓名
アラビア語の女性の名はア(…ah)で終わることが多い。イスラム教を媒介として南アジアに入ってきた女性名にそれがみられる。たとえば、Farid(男性名)-Faridah Khalid-Khalidah Shahid-Shahidah など。(P197)
また、女性に対する敬称として、トルコ語系のベーガム(Begum 夫人)がある。
なお、結婚後の女性は夫の姓だけか、または彼の姓と名を自分の名の後ろに持ってきて、ベーガム・ファリーダ(ユースフ)・ハーンなどのように名乗ることもあるが、特に名門出身の女性は生家の姓を名乗ることが多いようである。(P197)第三世界の姓名-人の名前と文化-(1994年:明石書店)
まとめ
パキスタン人の名前
・フルネーム、特に「姓」について、定まったルールがない。
・ムスリムについては、個人名のほとんどはアッラーの99の美名、クルアーン(コーラン)、その他宗教的言葉や人名を用いて名付けられる。
・公文書では、本人フルネーム+父親のフルネームを列記することで本人認証される(結婚女性は本人フルネーム+夫のフルネーム)。
・IDカード、パスポート、卒業証書、裁判所での審理などでは、加えて「~の息子」「~の娘」「~の妻」と記載・呼称される。
Wikipedia(JP) | アッラーフの99の美名
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%83%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%95%E3%81%AE99%E3%81%AE%E7%BE%8E%E5%90%8D
男性の名前
・男性の名前(given name)は、1語~2語(まれに3語)
2語である場合、最初に Muhammad ムハンマドがつけられることが多い、ただし通常の呼び名はもう一つの語になる。「M」と略記することがある。
名前(given name)+父親の名前(father’s name)が最も普及するフルネームの方法。
ただし、複数の名前(given names)がある時は、それだけでフルネームを構成することもある。
名前(given name)+付けられるもの
・父親の名前
・敬称(title)
・部族(tribal)名
・ファミリーネーム・一族(clan)名
・カースト(パキスタンではザートと呼ばれる)名
パシュトゥン系の人にはKhanが付けられる。(その他民族にもKhanがつく場合あり)
参考 パキスタン | 部族(tribal)名・一族(clan)名一覧
List of Pakistani family names
https://en.wikipedia.org/wiki/List_of_Pakistani_family_names
女性の名前
・女性は名前(given name)のみで呼ばれることも多いが、名前が1語だけの場合、父親のよく呼ばれる名前(father’s name)が付け加えられることがある。
・結婚をした女性は、父親の名前の代わりに夫の名前をが付けくわえられる。
・男性のように部族名や名称が名前につくことはなかったが、西洋の影響で次第に取り入れられつつある。
主なムスリムネームとその意味
男性の主なムスリムネーム
Arshad アルシャッド : 最も正しく導かれた者、最も道理にかなった。
Ali アリー : 気高い、崇高な、著名な、卓越した、名誉な、 預言者 Muhammad ムハンマドの娘 Fatima ファーティマ の夫です。
Akbar アクバル : 偉大な、広大無辺な、 Allah-hu-Akbar アッラー・フ・アクバル は「神(アッラー)は偉大(アクバル)なり」という意味です。
Faisal ファイサル : 審判、判断を下す者、決断力のあるもの、
Aziz アジーズ : 強力な、強い、最も尊ばれた、
Hasan ハサン, Hassan ハッサーン : ハンサム、美しい者、素敵な容姿、
Husain フサイン、フセイン : 美しい、 Ali アリー(預言者 Muhammad ムハンマドの第4代後継者)の2番目の息子の名前です。
Imran イムラーン : 注意深く礼儀を遵守する者
Rashid ラシード : 賢明な、思慮深い、正しく導く者、
Saadat サーダット : 繁栄、幸福 故サダト大統領(エジプト)の Sadat サダトと同じです。
Wikipedia(JP) : アンワル・アッ=サーダート
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%B3%E3%83%AF%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%83%EF%BC%9D%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%80%E3%83%BC%E3%83%88
Saeed サイード : 幸運、由緒のある、威厳のある
Shafiq シャフィーク : 情愛深い、憐れみ深い、温かい心を持った
Tahir ターヒル : 高潔な、純粋な、信心深い、謙虚な
女性の主なムスリムネーム
Ayesha アーイシャ : 活気のある、裕福な、繁栄している 預言者 Muhammad ムハンマドの夫人の名前です。
Noor Jahan ヌール・ジャハーン : ヌールは「光」、ジャハーンは「世界、世」で「世の光」という意味です。
Jamila ジャミーラ : 美しい、エレガントな、 Jamil ジャミール の女性形。
Munira ムニラ : 光、輝き、聡明な、Munir ムニール の女性形。
Naima ナイーマ、ナイマ : 幸福な、安穏な、心地好い、Naeem ナイーム の女性形。
Nasim ナシーム : そよ風、ここちよい風、新鮮な風、良い香り。
Rabia ラビア : バスラ(現イラク)に住んだ聖者の名前、「4番目の」という意味もあります。
Rukhshana ルクサーナ : 輝き、光り輝いている。
Uzma ウズマ : 偉大な、より壮大な、より栄えある、 Azam アザム の女性形。
Yasmin ヤスミーン : パキスタンの国花 Jasmin ジャスミン の意味です。
有名なムスリムネーム例
Muhammad Ali Jinnah(建国の父ジナー)
Wikipedia(JP) : ムハンマド・アリー・ジンナー
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A0%E3%83%8F%E3%83%B3%E3%83%9E%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%A2%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B8%E3%83%B3%E3%83%8A%E3%83%BC
Wikipedia(EN) | Jinnah Family
https://en.wikipedia.org/wiki/Jinnah_family
パキスタン建国の父 Muhammad Ali Jinnah ムハンマド・アリー・ジナー。
偉大な父という意味の قائد اعظم Quaid-e-Azam カーイデ・アーザムという尊称を頭につけることが普通ですので、
Quaid-e-Azam Muhammad Ali Jinnah カーイデ・アーザム・ムハンマド・アリー・ジナー と完全な名称で呼ばれるか、
Quaid-e-Azam カーイデ・アーザム と尊称だけで呼ばれるかのどちらかが多いです。
1番目 Given Name(名):ムスリムネーム Muhammad ムハンマド
2番目 Given Name(名):ムスリムネーム Ali アリー
3番目 Family Name(一族名): Jinnah ジナー
となります。1番目、2番目の名前イスラームにちなんだ名前をつけています。
Given Name(名)が複数ある場合、1番目に Muhammad ムハンマドと名付けられることが多いです。
Muhammad ムハンマドとはイスラム教を興した人物。世界史の授業ではマホメットと紹介されていますね。ムハンマドを和訳したときにマホメットに置き換えられたようです。ですから、パキスタン人にマホメットって言っても通じません。
Muhhamad ムハンマドに、ほめられた、称賛された、という意味があります。
※ Mian Muhammad ミアン・ムハンマド という風にMuhammadの前にさらに名前がつくこともあります。
例:Mian Muhammad Nawaz Sharif (シャリーフ元連邦首相)
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%83%AF%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%83%95
※(例)パルヴェーズ・ムシャラフのように1・2番目が合わさって1つの(名:パルヴェーズ)になり、(姓:ムシャラフ)との2つの組み合わせになっている人も多いです。
※ 地域(シンド州など)によっては、今もカースト名(例:Batthi バッティ Kaka カカ)が付けられていることがあります。
Pervez Musharaff(ムシャラフ元パキスタン大統領)
Wikipedia(JP) : パルヴェーズ・ムシャラフ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%91%E3%83%AB%E3%83%B4%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%82%BA%E3%83%BB%E3%83%A0%E3%82%B7%E3%83%A3%E3%83%A9%E3%83%95
Wikipedia(EN):Musharraf (ファミリーネーム)
https://en.wikipedia.org/wiki/Musharraf_(name)
1番目 Given Name(名):ムスリムネーム Pervez パルヴェーズ
2番目 Family Name(一族名): Musharraf ムシャラフ
元パキスタン大統領の Gen.Pervez Musharaff パルヴェーズ・ムシャラフ(退役)大将
Parvez パルヴェーズもMuslim Nameのひとつで、勝利を得た、幸運な、という意味があります。
ある時期までは名前の意味どおりのポジションに彼はいたのかもしれませんね。
Hamid Karzai(カルザイ元アフガニスタン大統領)
Wikipedia(JP) : ハーミド・カルザイ
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8F%E3%83%BC%E3%83%9F%E3%83%89%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%82%B6%E3%82%A4
Wikipedia(EN):Karzai (アフガニスタンで使われるSurname 姓のひとつ)
https://en.wikipedia.org/wiki/Karzai_(surname)
1番目 Given Name(名):ムスリムネーム Hamid ハーミド
2番目 Surname(アフガニスタン由来): Karzai カルザイ
Afghanistan アフガニスタンの Hamid Karzai ハーミド・カルザイ元大統領です。
Hamid ハーミド もMuslim Nameで、神の称賛、といった意味があります。パキスタン人でもハーミドを名乗る人は少なくないですね。
アフガニスタン(ダーリ語)・パキスタン(ウルドゥー語)と話される主な言語は異なりますが、こうしたMuslim Nameは共通なんですね。
Usama bin Ladin(ウサーマ・ビン・ラーディン)
Wikipedia(JP) : ウサーマ・ビン=ラーディン
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A6%E3%82%B5%E3%83%BC%E3%83%9E%E3%83%BB%E3%83%93%E3%83%B3%E3%83%BB%E3%83%A9%E3%83%BC%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%B3
Wikipedia(EN):Bin Laden(ビン・ラーディン 一族名)
https://en.wikipedia.org/wiki/Bin_Laden_(disambiguation)
彼のフルネームは
ウサーマ・ビン・ムハンマド・ビン・アワド・ビン・ラーディン
Usāma bin Muhammad bin ʿAwad bin Lādin
です。
アラブ人の名前の付け方は複雑なようです。
先にご紹介したジェトロの資料などをご参照ください。
日本貿易振興機構(ジェトロ)| アラブ人名の由来と正しい呼び方(PDF)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/middle_east/sa/others/pdf/name.pdf
アルカイーダの指導者だった Usama bin Ladin オサーマ・ビン・ラーディン です。
Usama ウサーマ と発音するのがMuslim Name的に正しいこの名前もMuslim Nameです。
勇敢な者、預言者ムハンマドとともに歩む者、といった意味です。
さいごに
ムスリムネーム、イスラミックネームは日本人には馴染みのない名前ですが、その名前ひとつひとつの意味を調べてみるとそれぞれに歴史や思いがこめられているなぁと感じます。
宗教・人種・国籍に関係なく、いずこの国でも子どもの名前をつけるときはいろいろな願いをこめてつけるものだなぁと思いますね。
参考文献・サイト
A Dictionary of MUSLIM NAMES, edited by Prof.S.A.Rahman, Goodwordbooks(New Dehli, India), 2003.
https://www.amazon.com/Dictionary-Muslim-Names-English-Arabic/dp/8178980045/
日本貿易振興機構(ジェトロ)| アラブ人名の由来と正しい呼び方(PDF)
https://www.jetro.go.jp/ext_images/world/middle_east/sa/others/pdf/name.pdf
アジア経済研究所:第三世界の姓名-人の名前と文化-(1994年:明石書店)
http://www.ide.go.jp/Japanese/Publish/Books/Extpub/c001.html
Wikipedia(EN)https://en.wikipedia.org/
Wikipedia(JP)https://jp.wikipedia.org/
イスラームの教えとは? | イスラームの暦 | マスジッド(寺院) | ラマザーン(断食月) | 小イード | ハッジ(巡礼) | 大イード | イスラミックな名前