ごみの問題(カラチ・イスラマバード)とカースト

初稿:2003年11月3日 更新:2018年5月21日(再構成、題名にカースト追加、クリシュナ・クマリ・コーリ上院議員(ダリット出身)の項追加)

カラチのごみ問題(動画:2017年)

Youtube : Karachi’s Failed Waste Management


アルジャジーラ・テレビが2017年3月に報道。
人口急増に、ごみ処理がまったく追い付かず、ごみの中で生活することを余儀なくされているカラチの人々の様子を紹介しています。
ごみが発火して火災になったり、衛生面の悪化で病気になったり死に至ることがある、と報じています。

一方で、環境問題を真剣に考え、街の環境美化活動、啓発活動を行う人も少なくありません。
パキスタンでのごみ問題は、インフラの未整備や、そもそもごみを扱う=掃除をする意識の希薄さが(カースト意識と結びついている面がある)など、複雑な背景があります。

イスラマバードのごみの現状

Faizabad ファイザーバード地区のごみ放置(2017年テレビ報道)

Youtube | Piles of garbage and dirt in Islamabad

24Newsというテレビ局が2017年に報じたもの(ウルドゥ語)。
イスラマバード・ラーワルピンディの間にあるFaizabad ファイザーバードの道端に処理されないまま放置されるごみについてレポートしています。
ファイザーバードのバス乗り場そばに大きなバケットが置かれ、そこにごみは一応集められているがそのままになっている。地元の人にマイクを向けると、こんなにごみが溜まっているし、悪臭(バドブー)もするのに、当局は何もしてくれないと報じる一方、インタビューを受けた清掃員(クリスチャンの方でしょうか)は”一生懸命仕事しているが、ごみは莫大でスタッフは僅かなんですよ”、と話しています。

インタビュー中しばしば出てくる کچرا kachrā カチュラー=ごみ(ウルドゥ語) です。

似たような光景はどこでも見ることができるかと思います。

2005年のイスラマバード:街中で見たごみ問題

ごみ箱です。
ごみ箱にはたいてい”PLEASE USE ME(私をお使いください)”と書かれています。

マーケットや公園にはところどころ↑のようなごみ箱がおいてますが、パキスタンの人には「ごみはくずかごへ」っていう感覚があるようにあまり感じられません。
パキスタンの人とドライブしたり、道を歩いていても、ごみはもうそこらへんにぽいって捨ててしまいます。
イスラマバードの道路や通りは、掃除がゆきとどいている(CDA(首都開発局)が低所得者の人(=キリスト教徒の人が多い)を雇って掃除させている)ので、まぁ、きれいなんですが、ちょっと道ばたをみると・・・・

道端を良く見ると・・ 道端のごみがいっぱい
道端のごみ

・・・・・こんな感じで、捨てられたごみでいっぱいというありさまです。

さて、イスラマバードではごみをおおまかに2種類に分別しています。

かわいたごみ・・・(僕の感覚的にはビン・缶・紙類など)
しめったごみ・・・(僕の感覚的には生ごみ・伐採した枝木など)

資源モノは、ごみ集めを仕事にしているひと(子どもも大人もいる)が集めていってしまう。
または、欲しい人にあげたり、廃品回収のお店に売ったりしている。
生ものは庭に穴を掘って埋めて肥料にしたりしている。
そのほかのごちゃごちゃ~っとしたものは、街のいたるところにある大きなごみ箱に捨ててしまう。・・・・ということです。


街中にあるごみ回収箱。いろんなごみで一杯。

このごみをあさって売れそうなものをより分けている風景を毎日見ます。
ごみ箱の真ん中のアルファベットは「CDA」首都開発局というセクションの略号です。


あるていど(1~2週間)たつとCDA(首都開発局)のごみ回収車がやってきて、たまったごみを回収していきます。
そのあと、埋め立て地に運んでいくのです。

ごみの埋め立てっていっても・・・・・
ごみ箱から回収した後は、大きな埋め立て地へ運ばれます。で、ある程度天日で乾燥させたら、火をつけて野焼きにしてしまいます。これでごみ処理はおしまい。

環境問題に取り組むNGOや政府機関もあり活動を続けていますが、自分の利害に直結しないとごみ問題に関心が向きにくいというところがあります。
日本では学校焼却炉の使用禁止などで注目を集めているダイオキシンについては、まだまだパキスタンの一般家庭では意識されていないですし、埋め立て地もシートで覆うとかもしていないので、大気汚染や土壌汚染・水質汚染の問題は今後、より注意を払わなければならなくなってくると思われます。

2005年のイスラマバード:イベント後のごみ問題

2005年2月のある日、イスラマバードで養護学校の子どもたちが集まり踊りや歌を披露してプレゼントをもらうイベントが行われました。

会場にはたくさんの子どもと先生が集まり大盛況のイベントになりました。
子どもたちへのプレゼントDAY
https://www.ktc-johnny.com/2005-02-03-happyday.html

さて、下の写真はそのイベントが終わった直後のものです。
何かが床に散らばっています。

では別角度でもうすこし大きな写真を。
床に散らばるスナック菓子の袋など
・・・スナック菓子の袋などですね。

日本では考えられないことですが、パキスタンではこうしたごみのポイ捨てはまず怒られることがありません。
ごみを家に持って帰るという習慣はなさそうですし、こうしたごみをそこらへんに捨てても先生たちは注意するということがありません。
では、こうしたごみはだれが片付けるのでしょうか?

生徒?
先生?
いいえ、違います。

こうしたごみは清掃の仕事をする専門の人が片付けるのです。
パキスタンはもともとインドの一部だったこともあり、カースト(身分制度)のならわしが(公式には廃止されていますが)まだまだ根強く残っています。

ごみ問題とカースト

カーストについて

Wikipedia(JP) : カースト
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%82%B….

カーストは歴史の授業で出てくるのではと思います。

ヒンドゥー教圏では、人々は、4つの基本的なカースト(Varna ヴァルナとも呼ばれる)に分けられます。

1 Brahmin ブラフミン : 司祭、祭事を司る。日本ではバラモンと音訳された。
2 Kshatriya クシャトリア : 王、貴族。武力や政治力を司る。
3 Vaishya バイシャ : 平民と訳される。商業・製造業に就くことができる。
4 Shudra シュードラ : 隷属民。人々のいやがる職業にか就けない。ブラフミンには影にさえ触れられない。

——
外 Dalit ダリット : 壊された民。Untouchable アンタッチャブル・不可触賤民と呼ばれる。

ここから派生して2000とも3000とも言われる身分・職業のどれかに属することになります。
違うカーストへの移動は認められません。カーストは親から子へ引き継がれ、結婚も同じカースト同士で行います。
そうしたカーストに属さない人たちがいます。そうした人々は自分たちのことを、Dalit(壊された民)と自称しています。社会の最下層に置かれてさまざまな差別を受け続けてきました。

Wikipedia(JP) : 不可触賤民 Dalit ダリット
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%8D%E5%8F%AF%E8%A7%A6%E6%B0%91

不可触賤民、Dalit ダリットが就く職業は、
皮革労働者、屠畜業者、貧農、土地を持たない労働者、
街路清掃人、街の手工業者、民俗芸能者、洗濯人
などです。

1947年に印パ分離し、1950年にインド共和国が成立すると、カースト制度の廃止が宣言されました。しかし、アーリア人がインドに侵入したBC1000年ごろから続くこの制度はいまだに根強く残っています。
このカースト制度はヒンドゥーの身分制度であり、イスラームとは無縁であるはずですが、この身分制度は宗教の枠を超えてその土地に代々根付いてきたものなので、イスラーム国家であるパキスタンでもその影響は今も色濃く残っています。特に地方農村においては。

そうした歴史や文化の背景があるので、
掃除をするのは身分の低い人(パキスタンではキリスト教徒)がすることだ、っていう感覚があります。
学校関係で活動する隊員が生徒(ほとんどがイスラム教徒)に掃除をさせようとすると、
“ごみは掃除人(キリスト教徒など)が片づけるのになんで私たちが掃除をしなければいけないの?”
と不思議がったり、なかなか掃除をしたがらないといった話を聞く事があります。
日本のみなさんには信じられないでしょうが、本当の話です。

パキスタン上院議員に選出されたクリシュナ・クマリ・コーリさん(ダリット出身)

2018年3月行われた、パキスタン上院選挙でパキスタン人民党(PPP)から立候補したクリシュナ・クマリ・コーリ(Krishna Kumari Kohli)さん(ダリット出身:女性)が当選しました。

AFPBB NEWS | パキスタン上院選、カースト最下層出身の女性議員が初誕生(2018年3月5日)
http://www.afpbb.com/articles/-/3166086

Youtube | Krishna Kumari Kohli Becomes Pakistan’s First Hindu Dalit woman Senator | Mango News

Wikipedia(EN) | Krishna Kohli
https://en.wikipedia.org/wiki/Krishna_Kohli

などによると、彼女は1979年シンド州の最奥、インド国境ぞいの نگرپاركر‬‎ Nagarparkar ナガルパールカル地区に生まれました。

伝えられるところでは小学3年生の頃に、隣接する Umerkot ウマルコート県のある地主に家族とともに囚われ、3年間労働者(農奴的に)として働かされたといいます。
その後、警察の踏み込みにより解放された彼女は、ウマルコット、続いて隣接の Mirpurkhas ミールプールカース県で教育を受け、初等教育9年生の勉強をしていた16歳のときに結婚。
更に勉学を続け、2013年にハイデラバードにあるシンド大学で社会学修士を取得しました。その歩みの中で、被差別階層の人々の権利擁護運動に取り組むようになり、今に至ります。