パキスタンの結婚式 1:ニカ―(契約)・招待状 | 2:メヘンディ・バラート・ワリーマ
初稿:2004年11月6日 更新:2018年6月28日(Love-Marriage、Court-Marriageに関する新聞記事追加)
結婚の一連の模様を撮影することが一般的
Amaima & Hussnain Nikkah Highlights Lahore by Fabistudios pakistan 2014
https://www.youtube.com/watch?v=OnDyQOFVd_Y
(Youtubeサイトに移動します)
パキスタンでは結婚までの一部始終をスチール・ビデオ撮影し、美しく仕上げることが一般です。
↑は、ラホールで行われた、ニカ―(結婚契約)の模様を収めた動画です。ニカーナッマ(結婚契約書)に署名をしたり、祈りを捧げるシーン、そして大部分は結婚を祝う人たちの表情をきれいに映したシーンが織り込まれています。Youtubeではこうしたビデオ制作会社のプロモーションを兼ねたビデオが多数アップされています。
パキスタンの女性、結婚の際は一段と美しいよなぁと思います。一連の儀式に集う方たちもきらびやかな装いで、結婚が人生の一大イベントであることを実感させられます。
Arranged marriage:パキスタン・インド圏での圧倒的多数の結婚方法
パキスタン・インドでの結婚(ウルドゥ語で شادی shadi シャーディー)においては
Arranged marriage アレンジ・マリッジ(双方の親同士で決める結婚)が伝統的圧倒的な方法です。これは、伝統的な家族制度、血族、カーストを重視するシステムがインド・パキスタン文化圏の基底にあることによります。
方法として、
・幼少から双方家族で結婚相手を定める、いわゆる「許婚(いいなずけ)」
・結婚式やパーティーの席上で、双方の家族親族が結婚相手を見定めて話を進める。
・親族知り合いなどからの紹介
などがあります。
同族内での結婚が多いことから、Cousin marriage カズン・マリッジ(いとこ同士の結婚)がよくみられます。
少しずつ増えつつあるLove Marriage
最近は都市部で、自由恋愛を指す Love marriage ラブ・マリッジで結婚した、とおっしゃる方も増えています。
この場合の「自由」とは出会いの場が伝統的な形に依らなかった、ということだったりします。この場合の結婚でも、必ず双方の家族の同意が必要です。
広義のアレンジ・マリッジと言えるかも知れません。
New York Times | A Pakistani-American Couple Opts for a Self-Arranged Marriage(2015年12月27日)
https://www.nytimes.com/2015/12/27/fashion/weddings/a-pakistani-american-couple-opts-for-a-self-arranged-marriage.html
アメリカに住むパキスタン人男女が、Coffee Meets Bagel というアプリで出会い結婚したストーリーを紹介、Self-Arranged Marriage(恋活結婚)のケースとして紹介しています。
わずかだが、両親の反対を押し切り法廷で結婚決着させるCourt Marriageも
両親の反対を押し切り、男女双方の自由意志により裁判所に結婚を認めさせる Court marriage コート・マリッジ (裁判所の認めた結婚)は、SNSなど出会いの手段と価値観の多様化から少しずつですが増えてきているようです。
Dawn(英字紙)| Islamabad sees rise in court marriages(2011年8月8日)
https://www.dawn.com/news/650259
2011年の古い記事ですが、コート・マリッジを行うカップルが増えてきていることを報道しています。
名誉の殺人
少しずつ結婚の多様化は見られるものの、双方の家族が同意しない結婚、婚前婚外交渉は、家族の名を汚したと非難され、パキスタンではしばしば「名誉の殺人」が行われています。
Wikipedia(JP) | 名誉の殺人
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%90%8D%E8%AA%89%E3%81%AE%E6%AE%BA%E4%BA%BA
産経ニュース | 婚前交渉疑い、電気ショックで殺害 パキスタンで横行する「名誉殺人」の恐怖(2017年9月26日)
https://www.sankei.com/world/news/170926/wor1709260001-n1.html
参考:パキスタンにおける結婚慣習(ジェトロ:2014年:PDF)
JETRO(ジェトロ)アジ研ワールド・トレンド(2014年8月)にパキスタンの結婚に関する記事が掲載されています。
持参金(ダウリー)、交換婚、いとこ婚、村内婚などが紹介されています。
パキスタンにおける結婚慣習 – インドとイスラームの折衷 -(PDF)
https://ir.ide.go.jp/?action=repository_uri&item_id=49119&file_id=58&file_no=1
プロポーズ・婚約
この項、
Wikipedia(EN) | Marriage in Pakistan
https://en.wikipedia.org/wiki/Marriage_in_Pakistan
に拠ります。
プロポーズ
双方または片方の家族が相手を見定めると、
男性側家族の一人または複数が、女性側家族を訪問し顔合わせ(通例1回目では結婚の正式申し込みはしない)。
1回目訪問後、引き続きお見合いを続けるかを男性・女性に確認。
正式な結婚申し込みは、男性側家族(長老含む)が女性側家族を訪れて行われる。ラブ・マリッジの場合、男性が女性に直接結婚を申し込むことがある。
結婚が双方同意されると、その場で飲み物や軽食が提供され、花嫁には指輪や装飾品が贈られることがある。
婚約
نسبت nisbat ニスバット、منگنی mangni マングニー、حبربندی habar-bandi ハバルバンディ などと呼ばれる。
双方の家族とごく親しい人たちだけで行われるのが通例。
伝統的には、男性・女性が同席せず、男性側母親などが、女性に指輪・チューリヤーンなどの装飾品を着けてあげる。最近は男性・女性が同席し、双方が指輪を交換することも多い。
ニカ―:結婚契約
نکاح نامہ Nikah Namma ニカ―・ナッマ(結婚契約書)を取り交わす儀式。儀式そのものは نِكاح Nikah ニカ―と呼ばれる。
ムスリムに置いて、これを取り交わすことで正式に結婚したと認められる。
立会人として2名が必要。ニカ―の儀式は、イマーム(宗教指導者)、ムフティ(宗教学者)、シェイク(部族リーダー)、ムッラー(地域マスジッド指導者)が執り行なう。
職場の同僚さんの娘さん結婚式(2004年)
協力隊の活動先の同僚さんには3人の娘さんがいます。
そのうちの長女さんが結婚することになりました。
ニカ―(結婚契約)に参列(2004年4月)
↑イスラームのしきたりにのっとり、立会人のもと花嫁・花婿がそれぞれ別室で署名をします。
その後、花嫁が父親にエスコートされて、花婿と一緒になります。
このときは家族・親族だけの内輪の式でしたが、私も呼んでいただき一緒にお祝いさせていただくことができました。
花嫁・・20歳 花婿・・25歳
2人にとって幸多き船出がまもなくやってきます。
招待状をいただく(2004年11月)
4月に行われた同僚さんの娘さんの結婚式が、イード後(2004年は11月中旬に断食月明け)に行われることになりました。
先日職場で、その招待状をいただきました。
招待状のことを دعوت نامہ dawat nama ダーワト・ナッマといいます。
同じ学校で活動する2人の隊員の方と一緒に招待してくださいました。
今回招待されたのは、
Mehendi(メヘンディ): 結婚式初日。花嫁は手などにメヘンディと呼ばれる装飾を施す。歌や踊りが興じられる。親族など身内だけで行われます。
Barat(バラート): 結婚式2日目。この日、花嫁は花婿の家へ連れて行かれます。嫁入り。大勢の人を招いて盛大に。
Walima(ワリーマ): 新婚初夜を終え、みんなで結婚をお祝いする日。盛大に行われます。
今回の招待状のデザインは、花嫁さんの妹さんたちが考えたとのこと。
宛名書きで夜更かしし、朝のセヘリー(断食前の食事)を食べられなくておなかを空かせていた・・・なんて裏話もありました。
イードが終わる11月下旬は、パキスタンでは結婚式ラッシュです。
同僚さんとこ以外にも結婚式に呼んでくださっているところがあり、学校以外で大忙しの何週間かをすごしそうです。