ランカ速報の紹介

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みずたにさんの快諾をいただきましたので、ここに紹介させていただきます。
なお、他のページへの無断引用などはご遠慮下さいね。
前編後編の2本立てですが、とっても面白いので最後までお読みになってください。


ランカ速報28-お・腹・保・障・せ・ず-(2004/02/13配信)
光を・・僕に光をください・・。

先日コロンボから3日ぶりにキャンディにくたくたになって帰って来た僕は帰ってくるなりベッドに寝転がった。

昼過ぎ1時、外は家の前でサッカーボールを所狭しと蹴る子供たちでなんだか騒がしいが、
いつものことなのでその騒がしい世界も目をつむれば段々遠ざかっていく・・。はずはない。
うるさい!

そうだ、ファンタでも飲もう。重たい身体を引きずって台所に到着する。 いつもなら2,3歩で冷蔵庫までたどり着けるのだが今日の足はいつもの倍かかる。

よくチラシなどで「~駅から徒歩1分、目の前!」などとあるが大体そういう場合は5分くらいである。
それくらい冷蔵庫までは距離が長く感じられる。

冷蔵庫のドアに手をかけてファンタを取り出したときに事の重大さを知ることになった。
冷蔵庫の最上段にまるごと入れてあったパイナップルがまるで
「あにき!緊急事態でっせ!」
と言わんばかりに頭を覗かせている。

「どうしたんだよ。」と返答する間もなく、冷蔵庫に電気が来ていないことに気づく。
「まじかよ!」

お目当てのファンタはひんやりと僕が飲むのを待っているはずが、生温かい。
「おい!ファンタ!熱があるのか!」

それはまるで一家の家計を支える母が無理な仕事の疲労で倒れた瞬間のようである。
ドラマならその後、救急車のサイレンのアップになり、病室で眠る母の横で、ドクターが家族に 「過労ですな。あまり無理をさせないように。」
などと言う展開になるのだろうが、今はファンタなので彼の容態を心配している暇はない。
もっと心配するべきモノたちが他にもたくさんいる。

僕はドアの内側にずらりと並ぶかわいい卵たちを見た。恐る恐る触ってみる。冷たくない!
僕は悔やんだ。先日チャーハンを作るときに卵1個にしようか2個にしようか迷った。

こんなことになるなら2個使っとくんだった!!今更悔やんでも遅い。
6個ある卵にマジックでメモをする 「お・腹・保・障・せ・ず」。
そのほか冷蔵庫のものたちは野菜類が多かったため、なんとか一命を取り留めた。

とりあえず、マーガリンや味噌については冷蔵庫復活の際にまた固体に戻ってくれるよう安否を見守るしかない。
僕は次への戦場へと向かった。
「冷凍庫」である。向かったといっても冷蔵庫の上である。
恐る恐るドアに手をかける。
この奥に想像もしないような地獄絵図が待ち受けていることだろう。

一人暮らしの方なら察しはつくと思うが、冷凍庫は何かと重宝するのである。 余ったおかず、材料など保存するには最高の場所なのである。

この日も僕は例外なくVIPな方々を冷凍庫にお招きして、毎日冷凍庫では夜な夜な 「クールフェスティバル」 「アイスカーニバル」 「スノーセレモニー」を提供していた。
招かれた牛肉王、鶏肉夫人、豚肉伯爵、ベーコン実業家、そしてアイスクリーム姫などは無事であろうか?

僕は冷凍庫だけに最悪の事態だけは避けたいと思った。

冷蔵庫は仕方がない、しかし冷凍庫は残っているアイスでなんとかクールを保っていてくれないかと、しきりに願った。
そっとドアを開ける・・。
開けた隙間からはフェスティバルやカーニバルの雰囲気さえ伝わってこない。
いつもなら冷たい冷気が僕のほほを撫で、仕事で疲れた僕の顔を包み、
暑いスリランカの世界から白銀のクール&クールの世界へと導いてくれるのに・・。
頼む!生きててくれ!いや、活きててくれ!

60%ほどドアを開いた瞬間「鼻」を疑うような異臭が僕の臭覚を伝って鼻を突く。
「くさっ!」

僕の大脳から危険信号が右手に発信された為、「冷凍庫内食品救出作戦」は一時休止。 めまいと共に勢いよくドアを閉める。油断していた。

普段冷蔵庫や冷凍庫を開ける時、においまでは警戒しないからな・・。
一同突撃体制に変更!

「右手より本部大脳へ報告!右手より本部大脳へ報告!現在冷凍庫内では強烈な異臭がする模様!室内から水分が流れ出た形跡あり!現在生存者は確認できず!アイスクリームは絶望的!その他肉類も生存している可能性低し!しかしこのままほうっておくわけにはいきません!一同突入します! 本部大脳!突入許可をお願いします!どうぞ!」
「こちら本部大脳、現在の状況了解。引き続き生存者確認を続行したいところだが、異臭で臭覚をやられる危険あ り。ここは庭師に連絡を取って彼が来るまでひとまず様子を見よ。」
「本部大脳!そんなことを言っている場合ではありません!一刻も早く生存者を確認するべきです!一刻を争う事態 です!」
「まて!おちつけ!笑顔の庭師ジョールソンに連絡しろ!彼なら笑顔で異臭も何のそのだ!それまで待て!」

「そんなことを言っている場合じゃない!事件は会議室で起きてるんじゃない!現場で起きてるんだ!」(一度言ってみ たかった)。

しかしながら、突入部隊の健闘むなしく「冷凍庫内食品救出作戦」は無念にも「全員死亡」という悲しい結末に至っ た。

肉類の中でも一番腐りにくいベーコンの様子から、 全員の死亡推定時刻は発見当初から死後約36時間前後と発表された。(ロイター通信)
しかしながら、悲劇はここで終わらない。僕が食品類の遺体処理に時間を費やしているうちに刻一刻と闇は迫ってい た。 そう、夜である。
肝心の懐中電灯はなんと「充電式」なのである。ここで皆さんによく考えていただきたい。
停電した時に懐中電灯を使いたいのに停電だから充電できないのである。
本末転倒!!!!!

あらかじめ充電しておかないからいけないのだ、とお思いになるかもしれませんが、 なんぼ充電しても一日でバッテリーが切れるランカの充電式懐中電灯。
僕は彼を「放電式懐中電灯」と名づけました。 しかしそんなことを言っている暇はない。
電気がなければ料理もできない!飯が食えない!電気コイルでバケツの水を温められない!だからシャワーを浴びれない!
ってその前にコイルがどこにあるのかわからない!トイレに行けない!便座はどこだ!携帯電話の充電も切れている!
パソコンのバッテリーもない!外の方が月で明るい!机の角で腰を打つ!
僕は空腹に耐えながらひたすら朝になるのを待った。

朝になれば電気会社に言って診てもらえる。 料理ができる。それまでの辛抱だ。 今日はとにかく寝よう。僕は暗闇の中で空腹のまま深い眠りについた。

明日来る第2の悲劇も知らずに・・・。 「ランカ速報29-Fuck You-」につづく。


ランカ速報29-Fuck you-(2004/02/19配信)

浅い眠りの中で
「明日は朝起きて電気会社に行って・・、冷蔵庫の掃除をして・・・・・。」
と考えながら 徐々に牛肉王の悪臭も忘れて眠りについた・・・。
ドンドンドン!ドンドンドン!
「マサ!!マサ!!」

激しいノックの様子にただ事ではないことを感じた僕は眠い目をこすりながら階段を駆け下りた。
「んっだよ、こんな朝早くに・・。」
と思って見た時計の針はすでに9時を回っている。

朝起きたての僕はまだ頭がスリランカモードに切り替わっていない。朝一番の独り言は日本語である。
僕がドアを開ける直前までノックをし続ける客人に少しイライラしながらドアを開けるなり 「モカッダ?(なんだよ)」と言う。

同じクラブチームのスドゥとチンタカだ。
「マサ、お前は俺達のチームで出ろ!」
「はやく用意しろ!」
「10時まで時間がない!」

「5000ルピーだぞ!5000ルピー!」
いきなり何言ってんだよ。そう早口で2人同時にしゃべるな。なんの騒ぎだいったい。

浴びせられるような言葉で僕が理解していないことを悟ると、2人を代表してチンタカが言う。

「マサ、今日アンピティアのグランドで7人制のトーナメントがあるんだ。優勝賞金は5000ルピーだぞ。 10時から始まるからはやく用意しろ!」

話の内容は理解できたが、まだ頭が起きていない。
「へー。」と僕が答えると、初めて二人に笑みが漏れた。

「へーじゃないよ。とりあえず顔洗って来い。」とスドゥが言う。
「はいはい。ったく、いつもギリギリにそういう話を言う。もっと前から言えよ・・。」

ぶつぶつ独り言を言いながら顔を洗いに行く。

たがが5000ルピーでテンパッてんじゃないよ、7人で割っても一人1000ルピーもないじゃないか。
日本円にしたら一人800円くらいだぞ。

2人以上にやる気もなく、しかたなくユニフォームとスパイク、栄養ドリンクなどをバッグに入れる。
早々にチンタカのスリーウィルに乗り込むと出発。

それでも頭が起きない。 アンピティアのグランドまで15分くらい。
チンタカの暴走運転に揺られてようやく目が覚めてきた。

「アピー、テーボム!(紅茶を飲もう)」スドゥが言う。
「そんな時間あるのかよ!」僕が言うと、「どうせ11時くらいからしか始まらないさ。」とチンタカ。
だったらなぜそんなに急がせた・・・・。
それにしても腹が減った。思えば昨日の夜から何も食べていない。
だって、昨日の夜は停電で家中が真っ暗だったから な・・。
停電!!
そうだ、今日は朝から電気会社に行かなければならなかった! なのに、こんなさびれた小店で紅茶とまずい揚げ物食ってる場合じゃないじゃないか!

「おい、チンタカ、スドゥ、俺今日電気が止まってんだよ。何時に試合終わるんだ?」

「それは分からないよ、マサ。決勝まで残ったら5時くらいに終わるんじゃないか?」

「ええ~?!電気会社閉まるじゃないか!準準決勝くらいで負けようよ。」

「何分けわかんないこと言ってるんだ!優勝する為にここに来てるんだろう。5000ルピーだぞ!」

「わかったよ・・。5000ルピー5000ルピーってうるさいよ。お前らさっきからそればっかじゃないか。
俺は5000ルピーより電気修復のほうが大事なんだよ。こうしている間にも冷蔵庫のモノが悪くなってるんだよ。」
「俺らは冷蔵庫なんか、家にないの!!知ったことか!」
「じゃ、冷蔵庫持ってみろよ!電気が来ないとモノが全部いかれちまうんだぞ!知ってんのか?!」

「そんな冷蔵庫買う金なんかあるか!」
「中古だったら1000ルピーくらいで買えるじゃねえか!」
「だったら今日優勝したら冷蔵庫買うよ!」

「そうしろよ!!!・・・・あ、いやそうじゃなくて、だから優勝とかじゃなくて、そんなにがんばらなくてもいいから、3位くらいでいいじゃない・・、ねえ。だから早めに帰ろうよ」
「さあ、行くぞ皆!マサ!会計頼むな。」
「俺かよ!」

「5000ルピー手に入れたら倍にして返すよ。」
そんなわけで渋々試合に出場するはめになった。

参加チームは全部で20チーム。ほとんどが地元のチームだ。僕らダンゴッラ地区からの参加は2チームだけ。 ほとんどアウェーでの闘いに近い。
試合はトーナメント制で敗者一発ノックアウト形式である。
ここ最近また暑さがぶり返してきて、日中は暑くてたまらない。それに加え今日は空腹である。
あるのはぬるいポカリスエット。日本から送ってもらった貴重なポカリスエットの粉にも関わらず、
「俺にもくれ。」とぐびぐび飲むチームメイト。試合をする前から全部なくなった。試合後どうするんだよ・・・。
抽選の結果、第2試合が僕らの第一試合である。

相手は中年のベテラン勢で結成したチームでそこそこうまかったが、やはりこの暑さに体力を奪われたらしく、
後半立て続けに3点取って僕らのチームは初戦を突破した。
続く2回戦では延長の末、PKで勝利。なんとか2回戦を突破し、昼の1時を過ぎたあたりで僕らのチームはベスト4に残 っていた。
もう一つのダンゴッラチームBもベスト4入りしていた。
準決勝が始まるころには飲み水も食べ物もなく、とにかく喉の渇きと空腹との戦いである。
あと2回勝てば5000ルピーである。チームメイトの目も血走っている。
ところが今大会はホームのアンピティアのチームばかりで固めたトーナメント。
アウェーチームである僕らダンゴッラチームが2チームも準決勝に残っていることでアンピティアサイドはあせりの色が。 そりゃそうだろう。
せっかくのアンピティア地区主催の大会の優勝チームが他地区チームになったら戦力を結集して望んだアンピティアサイ ドの面目丸つぶれである。
主催者側も相手チームもそしてグランドを囲む観衆も僕ら2チームに敵対心むき出しで目線が集中する。

チンタカ:「優勝してダンゴッラ地区のほうが強いってとこを証明しようぜ。」
スドゥ:「絶対勝つぞ!」
マサ:「腹減ってもう無理。」

周りのやる気についていけないも、試合に出れば他の人よりも必死にはなるが、それでも口渇と空腹はこたえる。

この暑さの中試合を2試合こなして水分は一滴もなし。

(チームメイトは水道水を飲んでいたが、僕はお腹を壊すのが怖い為水道水は飲まないことにしている)
食事は昨日から丸24時間食べていない。 つらい・・。

これはサッカー大会ではない。我慢大会である。
いよいよ午後3時、準決勝が始まった。

試合開始直後後ろから僕の足を引っ掛けていきなり相手チームがファール。 ファールと「空腹」にちょっとムッときたが、僕は大人なので怒らない怒らない。

前半10分またしても相手陣地内で僕を引っ掛ける。またもファール。 ファールと「空腹」にちょっとムッときたが、僕は紳士なので怒らない怒らない。

続く前半20分またしても同じような位置で同じ奴が今度は悪質なファール。 ファールと「空腹」にちょっとムッときたが、僕はコーチなのでちょっとだけご指導。
「お前サッカー知ってんのか?この野郎。」 その様子を観ていた観客から「白人!お家に帰りやがれ!」と罵声が飛ぶ。 続いて、 「白い奴が来るところじゃねえ!」
「お母さんのところに帰りな!」 と続く。 観客も一斉に悪ふざけ。 僕に向かってペットボトルが投げられる始末。
かつてイギリスの植民地だったスリランカは未だにイギリスのまねっこなので、アウェーのチームをホームの観客がいじめ、 そして審判もホームびいきである。

最悪なのはそれがかっこいいと思っているところにある。 だから決して本心で言っているわけではないのだが、それでも野次はエスカレートする。

400人ばかりいる観客はすべてアンピティアサイド。 チームメイトも僕への野次ですっかり戦意を失っている。 チームのみんなまでも相手の野次にやられている。
もう完全にぷっつんと来た僕はツカツカと観客席に歩み寄る。 おい、白いのがこっちに来たぞと言わんばかりに一瞬観客席が静まり返る。
日本人をなめるなよ・・・。完全に頭の中は喧嘩腰である。
そして観客の前でピタリと止まり、右手の中指だけをピンと立てると、
「FUCK YOU カル パータ(くたばれ黒色)!」
と火に油を注ぐようなことを言ったからもう黙っちゃ居ない。

野次が2倍3倍になり、アンピティア地区どころかスリランカ人全員を敵に回すような問題発言!

そのうち観客の中にも僕に味方する人も出てきて、客席は一時騒然となった。
たった一言が民衆を動かすとはこのことだ。
注目人物は下手なこと言えないなと思ったが、後の祭りである。
結局試合は戦意を失ったダンゴッラチームが終了間際に1点を取られ、試合を落とした。

結局優勝チームがどこになったかは定かではない。
僕は試合が終わるとそそくさとスリーウィルで家に帰り、停電を直さなければならなかったが、
電気会社はすでに閉まっていて、またも暗闇生活続行である。
結局、試合疲れもあり、外食に行く気にもなれず空腹を抱えてまた眠りについた。

これで34時間何も食べていない。
明日の朝には42時間の記録を打ち出すであろう。
ベッドに横になりながら今一番食べたいものは何だろうと考えた時、何故かジャムパンであった。

次の日、朝一番で庭師のスミッツに電気会社に行かせた。
よく考えたら最初から庭師に行かせればよかったのだ が・・・。

スミッツが電気会社の工事員を連れてきて、その工事員が室内のブレーカーをほいっと入れたら、 簡単に電気が復活した。

そのブレーカー、普通に入れるのではなく、ちょっと押して入れるのがコツだそうだ。
そんなこと言われてもなー・・・。
なんか悔しいな。

こんなことで工事員はとっても満足気な顔だし・・。 何はともあれこれで晩御飯も作れるし、暗闇に泣かされることもない。

ここ2,3日の軽い遭難生活からやっと開放された僕は電気のありがたみを知り、冷蔵庫の中身を買いに町へ繰り出し た。


初版&最終更新日 2004年03月06日

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